くり返し、くり返し…

 

 こぼれ落ちようとする、今一瞬。これから新しい人生を歩み出すのだ。


 ぶどうの房の様に連なった仲間が、ぽとん、ぽとんと落ちていく。時がくるのを順番に同じ房で待っている。

 私たちは同じ文様のグループごとに房を成している。ひとつの生を終えて戻る時も、異なる房に戻ることはない。

 ここにいる限り不自由なことはなく、時間の概念もなく、欲望を持つこともない。何ひとつ感じることはない。なぜ私たちはこの房から離れるのか。


 生身のからだを得ることで色々な感情を経験する。自分とかかわる存在とふれあい喜怒哀楽を覚える。感情はこの房にいては経験することができない。


 生れ落ちて感情を経験することで私たちは変わっていく。

 感情を体験し美しく透明に磨き上げられるものもいれば、黒くくすむものもいるだろう。この房に戻る時、体験した記憶は薄れていく。覚えてもう一度新たなからだを得ることはない。なんどもなんどもその繰り返しをしていく。

 一度黒くくすんでしまったとしても、何度も美しく磨かれるためにこのループを繰り返す。その時間や回数は人であれば気が遠くなるほどのながさだ。

 私も何度目かの生を受ける。以前のことは忘れて初めからやり直すが、自然と以前のおさらいをさせられる。そしておさらいが終わった時点までたどり着くと、そこからは新たな経験をしていく。

 おさらいをする時は、一度超えた課題なので記憶になくても比較的早くそこまでたどり着く。そこから先は新たに経験することなので、辛い思いも苦しい思いも沢山するようになっている。

 今回はどこまで先に進めるだろうか?私たちは決められた課題に行き着くまで生き続ける。自分でリタイアは出来ない。生まれたらもういいと言われるまではどんなに生きづらくても苦しくても生きなければならない。課題をクリアしなければ房に戻れないのだ。

 逆に言えば、まだ房に戻りたくないと思っていても課題がクリアされ、これ以上先の学習を今回はいいと言われれば房に戻らなければならない。


 しかし私たちにも、このループから抜ける時がくるだろう。その時は今まで生まれ変わった経験をもう一度繰り返し最後の課題を超え、光輝く透明の水晶の丸玉の様に美しく磨き上げられて最後の時を過ごす。そして最後の生を終えた後は美しい丸玉の姿は宇宙の一部となるのだ。

 そう、私たちを作ったものは宇宙も作っている。宇宙のはじめを作ったもの。全てを作った存在。私たちも知りえない何か。その一部にいつか帰るために私たちは何度も生まれ直すのだ。


 今回の課題は……この瞬間覚えていても、新しい肉体を得た「わたし」を意識する頃には忘れてしまう。覚えていればまわり道をしなくても、目的に向かえそうだがそれでは必要な感情を体感することなく過ごしてしまうかもしれない。

 だから今こうして感じている意識は忘れ去られる。何度も繰り返したことも今回のからだで初めて体験することには初めての感情として味わうのだ。


 暫く房をあとにする。ここでの全てを忘れ一瞬後には、あたらしい「生」を受けにいく。

マキ's select

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