ご存知でしょうか?伊庭靖子さんのこと・・・。
もう何年前だったろうか?確か8年ほどになる。
初めて伊庭作品をみたのはどこかの美術館の帰りにみた無料パンフレットだったと思う。
その淡い色合いが、写真なのか描かれたものなのか判別できなくて、それと同時にとても強い印象を私に残したのだった。
そのパンフレットは頂いて帰り、部屋に飾っていた。何度も何度も眺めては、どうしても実物をみてみたくて最終日に半日お休みを貰って急ぎ行ったことをいまも覚えている。
最終日の最終の時間帯、しかも平日で館内の人影はまばらだった。しかし作品をゆっくりみている時間は限られていた。
何時まではいていいのか、チケットを出しながら聞いたことをいまも覚えている。館内の係員に驚いた顔をされ、報道関係の者なのか尋ねられた。
そんなにしっかりみようと思う人物はいなかったのだろうか?思い出しても笑ってしまうが、当時の私は本当に作品をみたい気持ちが大きくて必死な形相をしていたと思われる。
私がみたのは鎌倉にある、神奈川県立近代美術館で開かれていた「伊庭靖子展-まばゆさの在処(ありか)-」であった。
会社からこの美術館までは遠い。午後の半日休暇でいいかと思った私が甘かったのだ。
しょせん私は神奈川県民でないので、鎌倉と働いている京浜地区がどのくらい距離感があるのか見当がつかない。鎌倉は遠足で行くだけあって遠かった。
思いがけず帰りに八幡宮へ参拝するという機会も得たが、兎に角この日私が会いたかったのは伊庭作品だ。
作品は思いのほか大きかった。シルクスクリーンで仕上がったそれはとても緻密に描かれている。そして空気と光を含んだ色合いが美しい。これが広くシンプルな白い壁に掛けられているとうっとりするほど静かで美しく感じるのだった。
目からそのものの柔らかさ、硬さ、重みが感じられるのだった。
作られた「もの」の美しさ。命あるものとは違った美しさを切り取り描いた作品たちだった。みているとこころが落ち着いてくる。ずっとここにいて、これらに囲まれていたいと思えてくる作品群だった。
伊庭さんの展覧会で私は最初にアップしたカタログを購入して帰った。そして思い出しては覗いている。プロフィールをみると京都の方で年齢も同じであった。同じ年でも全く私とは違う世界で生きている見知らぬこの人になぜだか私は親しみを持った。作品が何かを私に訴えかけたのかもしれない。
久しぶりに伊庭さんはいまどんな活動をしているのだろうか?とインターネットで検索してみた。
来月3日間(3/17-3/19)東京国際フォーラムでやる「アートフェア東京2017」に出品だそうだ。
今も京都でご活躍なご様子。今は若い人を教える立場におられる。
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